上座と下座
スポンサードリンク
「好きなところに座りな。おまえの座ったところが下座だから。」
この言葉、大人数で飲み屋さんのお座敷なんかに行ったときに使われることがたまにある。目上の人が出入り口近くの席になって若手が床の間近くになり、席次を気にしてくれる若手の人に目上の人が使うかな。詳細なシチュエーションは切りが無いから省略。あと初出とかその精神とかは知りませんので、もし僕の考えと違ったらごめんね。
細かい表現に違いはあるけれど、僕はこの言葉が大好きだ。僕が初めて聞いたのは父親からで、確か落語家が弟子に対して言ったことだというエピソードだった。おそらく色々なところでいろいろ異なる逸話があることだろう。
僕も席順なんかで迷ったり恐縮したりする若い人がいると言うことがある。
これの真意が「あなたを格下に見ているってことじゃないですよ」ということが分かる相手に対してしか使わないけれどね。
僕の場合はサラリーマンでもないしおけいこごとの師匠でもないし弟子でもないし。基本的に公な人の上下関係がない。
もちろん尊敬する人はいるし敬う人もいるけれど、何か形式ばった中で生活しているわけじゃないっていこと。
この言葉をリラックスした中で言える関係って、相手が自分を敬ってくれていることも分かっているし、自分も相手のことを尊いと思っている、という関係だという前提条件が僕にはある。だから若い人に
「奥野さん上座に行ってください」
って言われちゃうと恥ずかしいのを隠す感じで冗談混じりに
「あなたが座るところが下座だから気にしないでくださいw」
「僕が座ればどこでも上座だから気にしないでねw」
って言って済ませちゃうんだよね。
なんどでも言うけど、決して上から目線で言ってるのではないよ。
まあ、だいたい上座を譲ってくれる方は僕より年が若いことが多く、そういう方に対して、その時点で十分な心遣いを頂いたと思ってるから。
その志を頂ければ、実際の席なんて、少なくとも僕にはどうでもいい話なんだよね。
いつどこで誰にでも使える言葉ではないと思う。
サラリーマンが初めて会ったお客さんに対して「自分が座ったところが下座だから」といって床の間に陣取ったら、礼儀を重んじるお客様には怒られるし、その若手の人の上司やご両親の顔に泥を塗ることになっちゃう。
ある程度ルールの厳しい先輩・後輩関係だったら、どれだけ仲良くなってもそういう礼儀を守った方が良い、という場合もある。
また、年齢が自分より上の相手なのだけれどコチラが接待されるような場の時には、勧められるまま上座に座った方が万事スムーズな場合もある。そういう時にはもちろん恐縮しながら座るんだけれど。
こればっかりは臨機応変に、自分だけでなく相手を見て、空気を読みながら、としか言えないんだけれど、気が置けない相手と飲むときには年長だろうが若輩だろうが、座席なんか気にしないで楽しく飲めればいいなと思うんだよね。お互い敬う気持ちがあれば、それで良いじゃん。
冒頭の言葉。そもそもこれは上座の気を遣われた人が若い人に対して使う、冗談交じりの「座席は気にしないでください」の言い換えの言葉だと思ってる。
だから、冗談を言える関係の人に気を使われた感謝の意が含まれつつ楽にしてくださいねというコチラからの返礼なんだという気持ちで使ってるよ。
ってことでまた使いたいので、今度僕と飲んでくれる若者のみなさん、一度は僕に上座を勧めてくださいね。