駆込み男
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「駆込み乗車はおやめください。ダァシェリェス」
ってなアナウンス。駅で聞くことあるじゃないですか。
ダァシェリェス
って聞いて駆込みたくなった僕はさしづめ、パブロフのオッサンだったのかもしれない。
や、やっちゃいけないってことはわかってるんだ。ゴメンナサイ・・・
その日は品川から新幹線に乗ろうかなーと思って。
移動費を節約したかったのと現地で少しでも長い時間を過ごそうとした貧乏心から、朝早いの新幹線のチケットを取ってしまった。それでも指定席はイッパイだったんだよ。
自宅の最寄り駅まで向かおうとしている道すがら。
品川にたどり着くには複数の乗り換えをこなさなければならない。休日の朝早くの電車はそれほど間隔が詰まっているわけではないという中で僕は焦っていたんだよ。前日に確認した乗り換えのご案内アプリを見て覚えた、最寄駅の出発時間にね。
あれ?次の電車に乗れないと、新幹線間に合わないじゃないか!
いや、間に合わなきゃ間に合わないで自由席に乗ればいいことも知ってるしアレだけど、そこで自由席でいいじゃん、指定欲しかったら取り直せばいいじゃんって思わないよね?間に合わせたいよね。
走る。
駅に向かって走る。
点字ブロックで跳ね上がるキャリーカート。カーチェイスのシーンで小さな上りを上がった車が軽くジャンプするシーンがあるけど、あんな感じだったよ。
カートだから着地の瞬間にコケるんだけどね。ねじれる手首が痛い。
で。走る。駅に向かって走る。
何を考えていたのか自動改札は普通の狭い方を通ろうとしてカートが引っかかる。伸びる手首が痛い。
エスカレーターはない。カートを抱え込んでだだだだっと降りる。駆降り男だ。
「ダァシェリェス」
待て〜い!待て待て待て待て待て〜い!
だだだだだだだっ。
ブシュー。
はぁ。間に合った。
慣れないランをし、手首を捻り、伸ばし、駆け込んだ僕はその日の暑いこともあって汗だくになっちゃったよ。きっと襟のところなんてベッチーニョだったろうし、ポロシャツから乳首も浮き出ていた。
お気に入りのSAMOURAIの香水も汗臭さに変化(へんげ)したと思うよ。
息もゼーゼーうるさかっただろうし、そりゃあひどい有様さ。
でも、これでいいんだ。あとは落ち着いて乗り換えれば間に合う。
乗り換えを順調にこなし到着した品川駅。
さぁ、新幹線に乗るぞっと思った僕は小さな異変に気付いた。
どうやら、僕のチケットの新幹線は10分以上あとの発車。
あれ?もっと家からゆっくり来ても間に合ったの?
なんのことはない、乗り換えご案内アプリの到着時刻指定を
「念のため早めに設定していた」
コトを忘れて、その時間が絶対と思い込んでいたんだ。
- 念のために早く設定した時間。
- それに少し遅れそうだったものの割と時間を守った行動
隙がなかったよ。
ただ一つ隙があったのは、その設定した時間をギリギリの時間と勘違いしてしまってたんだ。
お気に入りの香水の香りに包まれて優雅な新幹線の旅に出るはずだった。でもここにいる現実の僕は、汗でベトついた肌と湿り気が気持ち悪いポロシャツに包まれたアブラギッシュなおじさんだった。
良い子のみんな。
駆込み乗車は危険だぞ。
あとな。
早めに時間設定して旅の日程を確認したら、早めに設定したコトを忘れちゃダメだぞ。
これ、おじさんとの約束な。