Unfortunated odaiji

僕の残念はみんなの微笑み。生活にちょっとした「クスッ」を。

なんきん


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僕は意識高い系じゃなくって意識が高いんですよ。

だから企業が開催する動画広告セミナーなんてのが無料だったので参加してきたんです。無料だったからね。

 

一時間半ほどの無料セミナーは初心者向けだったんですが、そもそも動画広告の知識がほとんどない僕が基本を学びに行ったこともあって内容は大満足。質問にも答えていただいたりしてうれしかったですよ。いい話やった。

 セミナーが終わればすることといえば、帰ることですよね。そうしないとお家につかないからね。

会場は4階。無料セミナーに行くくらい意識の高い僕は、帰り道は階段を選んだんです。行きは使わなかったのかいって?使わないよ、上りは辛いもん。

 

で、エレベーターの脇っぽい扉を開けるとビンゴ。そこは階段だったのね。外階段。よっしゃー下りたるでーってくるくる回るように階段を下りていくわけです。

 

途中の踊り場に段ボールが積んであったりして、ああこれは緊急時にイカンやつだ!とか思いながら降りていって、さあビルの外にでるぞ!

 

ってところで、最後の扉が開かない。鉄板みたいな扉なんだけれど、下はロックされていないものの上がくっついていて開きやしない。押してもだめなら引いてみたかったけれど取っ手もない。



 おいおい、このビルは災害のときにちゃんと避難できるのかよ!

非難してみたけど僕が出られない事実に変わりはない。



ちっ。あきらめてエレベーターを使って外に出るか。

 

そう思って手近な2階から中に入ろうとしたら、扉の近くに青く光るカード読み取り機があるわけよ。

で、扉を開こうと思ったらロックされてはいれないの。

 

なんだよしゃーねーなー。4階まで戻るか。

 

なんでそう思ったかわからないけれど、4階ならちゃんとは入れる気がしてたんだ。そんときの僕は。

 

えっちらおっちら4階にもどってみると、そこにもおんなじ青い光が。

がたっ。がたたっ。

 

まあ、扉開かないよね。

 

 

セキュリティしっかりしているんだね。とか感心していたけれどそれどころじゃない。僕は外気の当たる外階段で軟禁?監禁?されてしまったんだ。キンコーズだよ。

 

ちょいとばかし慌ててるから、また1階に降りてみたりして。

 

なんたって外階段なんだからほかに出られるところあるんじゃねーの?って思ったけれど、なんだかうんとよじ登るところとかすんごい隙間しかないようなところでなかなか出られない。頭が入りそうなくらいの隙間から外に出られそうと思ったんだけれど、その向こうは歩行者がたくさんいる大通りで抜ける姿を見られるのが恥ずかしくて仕方ないんだ。

 

それでもやっぱ出たいから、しばし迷った結果そこに頭を突っ込んでみたよ。横向いて、右手が外に出て、頭を傾けて通るのを確認してやったー!って思ったら、腹がつかえて出られないの。

 

もうね、この時ほどダイエットしようって思ったことはないよね。

 

なんかひっこめればいいとかそういうちゃちな問題じゃなくって、とにかくなんだか出られない。

 

うんとかすんとかやってみたんだけれど、やっぱり腹がつかえて出られなくて。後ろ見ると人が通れそうなビルとビルの間の隙間っぽいのがあるから進んでみたんだけれど、結局そこにも出口はない。

 

こうやって見ているとビルの周囲ってのはいろいろな蓋や扉があるもので、そういうところには結構原始的な南京錠でロックされてたりするんだけれどね。

 

南京錠でロックされたビルで軟禁されているわけよ、僕。

 

 

我、進退窮まれり。

 

 

最後に思いついたのは、セミナーを受けた会社の代表電話にTELして、かくかくしかじかで軟禁されてるからだしてケロ!っての。

 

Webサイトで会社ホームページ調べて、代表電話番号を確認して、スマホで電話かけて。

 

「あーすみません、先ほどセミナーを受講したものなのですが、階段で帰ろうと思ったら閉じ込められちゃって。エレベーターで帰りたいんで開けていただけますか?」

あ・・・・え・・・・、あ、はい。今向かいますのでしばらくお待ちくださいませ。

 

待つこと15秒くらいだっただろうか。僕には15分くらいに感じた。うそ。15秒は15秒だった。

 

 

総務っぽいかわいらしい女性が出てきたね。

飲み屋であったら間違いなくお酒の一杯もごちそうして

 

「この後どうですか?」(キラーン)

 

って言いたくなっちゃいそうな女の子。

 

でも今の僕は外階段に軟禁された子ネズミだ。その女性も

 

(なんでこの人わざわざ階段に出て閉じ込められてるんだろう・・・)

 

って顔してた。

 

 

いやー、閉じ込められちゃいましたよ」といった僕に

申し訳ございません」と謝るそのかわいい女性だけれど、どう見てもその目には笑いを堪えている様子がありありとしている。

 

「いやほんとお世話になりました。すみません。いやーなんで鍵かかってるんですかねー。ははは。」

 

「申し訳ございません」

 

もうね、笑いたいのかあきれているのかわからない顔してる。おそらくその人の人生で初めて「外階段に軟禁された男」としてインプットされちゃったんじゃないかと思う。

 

ようやくエレベーターが来た。乗って1階のボタンを押し、エレベーターホールにいるその子にもういちど「ありがとうございました」。

 

って、言おうとした。その子はもういなかったよ。

 

とぼとぼ。