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Unfortunated odaiji

僕の残念はみんなの微笑み。生活にちょっとした「クスッ」を。

独り相撲


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男女数名が参加しているSNSの小さなグループ。

もともとは飲み会の連絡用に使っていたものだけれど。

それぞれの普段の活動が楽しく、面白く、スゴい方々で、見てるだけでも飽きない、いいグループなんだよ。


ある時そこに一件の投稿があったよ。


「今日◯◯(店名)に行こうと思ってるんだけど行ける人!」

差出人はタヌキ顔の可愛い女子。
お店は、まあまあ訪れる、馴染みのお店のひとつ。

早速反応が集まる。

俺「はーい」
A「いそがしぃー」
B「イベントゥー」
C「別件バウアー」
D「Bと同じイベントー」

僕はここで気づくべきだったんだ。
言いだしっぺの女子が

「みんな忙しいんだね〜」

とつぶやいたことに………。


仕事が終わってそのお店に行ったボク。
とくにそれ以上はSNSに書き込むこともなく、いつものように入店したよ。必要以上に言葉にするのは面白くないからね。

立飲み屋のその店の、僕が陣取った場所はカウンターの隅っこ。入り口の人の動きを背中で感じられるポシション。

その女子が早く来ないかなぁ。来たら、気づかないふりして声かけられるのを待ってるんだ!などと思いながら全身の神経は背中に集まってる状態。

他のお客さんが入店するたびにチラッ。
店員が入り口側のお客さんにサービスするたびにチラッ。

その時の僕の背中は多分ISO51200だし、100メートル先で針が落ちる音を聞き分けることができただろう。もちろん500メートル先のジャスミンの香りも嗅ぎわけることができたよ。



馴染みの店だから店主も仲が良いし、常連客ともくだらないこと言ってわいわいできてる。このところ栄養が偏っていたことを身体がわかっているからか、魚と野菜のアラカルトを頼みながら日本酒を頂いていた。

その日は締め切りの仕事の関係で3時間くらいしか寝ていなかったんだ。人によってまちまちだろうけど、僕にとっての睡眠3時間は遊びたがりの子供が買い与えられたゲームのプレイ時間のように短く、足りない。

背中の高感度センサーのバッテリー消費も激しく、睡眠不足も重なったことから、いつもそのお店で飲む量の半分くらいのお酒で酔いが回ってきた。それでも三合くらい飲んでたんだけどね。てへぺろ

酔いがまわるまで、およそ2時間半。
その間、彼女のグループへの投稿は一切ない。

既読もつかなかった。


彼女が不意に来て僕は驚いちゃうんだろうなーという都合の良い予想を150分間し続けていた僕は酔いと既読の付かない焦れに負け、お店を出ることにした。

彼女と僕は決して仲が悪くない(と思ってる)。
だから故意でないことも知ってる。
その女の子は決して悪いことはしてないんだよ。ただ、僕の書き込みに気づかなかっただけ。


だけどね。

気づくべきだったんだ。

「みんな忙しいんだね」の状況に。

書き込むべきだったんだ。

「僕はここにいるよ」って。


言葉が少なければ少ないほど、行動の驚きは大きくなる。人がばったり出会って驚き、楽しいのは、そこにその人がいることを言葉で知らないからだ。
それを少しでも味わおうとギリギリまで言葉を減らした僕は、思い背中に呻きながらトボトボと家に向かった。


ああ、独り相撲。
ああ、勇み足。