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朝。
希望の朝。草花は朝露の美しい宝石をたたえ、鳥たちは楽しげに飛び回る。
わりかしそんなこと関係なく、僕はお客様の下へ向かうべく急ぎ足で歩いていた。
朝露が僕の財産になるわけでもなく、焼き鳥は昨日食べた。
それに、もう9時過ぎだしね。そんな爽やかな朝は三時間前に消え失せてるのが本当のところ。
食パンをかじった女子と曲がり角でぶつかって出会わないかな。
その女子はきっと
「遅刻、チコク~っ」
っていながら走っているんだろうなと思いながら急ぎ足で歩いていたよ。
やがて、交差点に。見通しの悪い交差点。
近くの駅は、この時間は1の位が3の分の時間に発車することを知っている。急行とか、なんとか急行とか、なんとか行とかありすぎてなかなか各駅停車に恵まれんのね。
スマホの時計を見ると、分の末尾が「0」を示していた。
あれ。ちょいと小走りしないとあの電車、間に合わないかも?あれを逃すと次の電車は10分後、まだ間に合うけど、ギリギリになるのもイヤだな。
そう思ってちょこちょこと走り始め、信号のない横断歩道を渡った。
刹那。
「ちょっと、気をつけて渡りなさい!子供もみてるでしょ!」
だみ声だが、確かに女性の声。
声は、僕に向けられているようだった。
振り返るとそこには黄色い旗、帽子をかぶったおばちゃんがおわしている。
俗に言うみどりのおばちゃん。
おばちゃん曰わく
「あんたのそういうのを子どもたちが真似したら事故につながるでしょ?私らがいるときは登下校の時間なんだから、そういうのを謹んでもらえないかしら?」
至極ごもっともだ。僕ら大人の軽率な行動は、子供たちがマネする。
「あ、スミマセン。気をつけますね」
そう謝った僕。幸いにしてその瞬間に子供たちは居らず、未来の日本を託すべく彼らにボクの痴態をさらさずにすんだ。
反省しながら駅に。ののしりあいの喧嘩よりもこういう注意の方が後を引くよね。
3
を指していた。もうすぐ4の、3だった。
ああ、あのときゆっくり歩いていたら注意もされず、この電車間に合っただろうになぁ。
次の乗り換えの時に小走りしたら、誰に注意されるのかなぁ。
そもそも大人になってみどりのおばちゃんに注意されるの、はずかしいよなぁ。
そう思いながら、次の「3」が来るまでホームに独りぼおっと立っていた。
こんど生まれ変わったら、注意されるより、できる側に立とう。
みどりのおっさんの募集はどこでやっているんだろう?